嫁自慢 〜 in 一謡当主家の廊下〜
「おや、圭。」 「ああ、兄さん。こんにちは。」 「お前が郷にいるとは珍しいですね。ああ、そう言えばきらが今日は陽菜さんが遊びに来ると言っていましたか。」 「はい。私も愁一様のご用がありましたので、迎えに。」 「そうですか。相変わらず仲が良いですね。もしかしてそのセーターも白石様の手作りですか?」 「あ、ええ。そうなんです。陽菜さんは編み物がお上手で。」 「そうですか。羨ましいですね。」 「きらさんは編み物はされないのですか?」 「きらは編み物はあまり向いていないようでね。でも料理はうまいんですよ。こないだもうっかり釣ってしまった川魚を上手に料理してくれましたよ。」 「それはすごいですね。陽菜さんはお菓子類はお上手なのですが、お料理はそれほどされないんですよ。ああ、でも私の作った物をとてもおいしそうに食べて下さいます。その時の笑顔がとても可愛らしくて。」 「ああ、美味しい物を美味しそうに食べている姿は本当に可愛らしいですよ。きらもそれは美味しそうに食べるから。」 「そうなんですよ。嬉しそうに食べて下さって「美味しかったです」と笑って頂けると、それだけで満足してしまいます。」 「ええ。わかりますよ。そういう時の顔。本当に可愛いんですよね。」 「柏木様もなんですか?ですが、陽菜さんもそれは可愛らしいんですよ?」 「おや、言いますね。きらは可愛いですよ?照れ屋だから私の言葉に直ぐ赤くなったりして。」 「それなら陽菜さんだってそうです。頬を赤く染めて、柔らかく微笑む笑顔など、他の者にはけして見せられません。」 「同感ですね。普段は気が強いのに、不意に甘えてくる姿も絶対に他の男には見せられない。」 「ええ。しばらくぶりに会えた時に見せて下さる少し泣きそうな嬉しそうな顔も。」 「不意打ちでキスをした時の顔もですね。びっくりして本当に可愛い顔をしてくれるんですよ。」 「陽菜さんは抱きしめると慌ててでも段々大人しくなられるのがそれはもう、可愛くて。」 「ごくたまにですけど、最近はきらからキスをしてくれるようにもなったんですよ。」 「それは、羨ましいです。陽菜さんは恥ずかしがり屋なので、なかなかしてもらえなくて。」 「ふふ、きらもそうなんですけどね。本当にたまに。」 「なるほど、それはどんな風に・・・・」 「「何の話をしてるんですかーーーーーーーー!!!!(///)」」 ―― その後、明月兄弟は嫁と恋人にそうとうメロメロだという噂が一謡の郷で面白可笑しく語られたことはいうまでもない。 〜 終 〜 |